ヴァレンティーナ・バルバロとエコーズ・オブ・エンパイア:第8話「ペール」
第8話「ペール」
ヴァレンティーナは、希少な美術品や骨董品を好んで取引していたが、無駄なリスクが多い情報取引は、常に高額の支払いだった。そもそも座標の入手元がマテオだったので、彼を訪ねることはできない。その座標は、シギス・ステーションを出るときに耳にした、非常に興味深い通信の発見へ導いた。聞こえてきた内容に思わず足がすくんでしまったが、念のために確かめる必要があった。
一番のお気に入りのデータブローカー、フェリックス。仕事が良くでき、適切な人脈を持っていて、お金持ちだ。どこかの大貴族の隠し子で、大金と引き換えに小さな家に養子に出されていたのだろう。というのがフェリックスの言い分だった。仕事の面では頼りになるが、それ以外の面では常に自信家で大げさで、とてもドラマチックだった。
ヴァレンティーナがペールの端、セレニティ・パイアで見つけたグランドクルーザーは、彼の所有している船であり、 “別宅 “であった。ある探検家がひどい目にあった、ということを意味する名前にもかかわらず、セレニティ・パイアは、立ち上がったばかりの新しい体制で交通が増え、もしヴァレンティーナが突然追っ手を発見しても、簡単に人混みの中に紛れ込むことができた。フェリックスのクルーザーは巨大ではないが、アステリアス号を簡単に飲み込めるほどの大きさで、自称貴族のプレイボーイたちが好みそうな贅沢で溢れていた。
ヴァレンティーナが大通りから離れた快適なリビングルームに入っていくと、「 前回のいざこざをまだ根に持っているのかと思ったよ。」とフェリックスが笑いながら言った。貴族のために使うリビングルームではではなかったことに、贅沢が苦手なヴァレンティーナはホッとした。「やられたわ。 」
「私の取り分を半分横取りしようとした。」ヴァレンティーナは鼻で笑って言いながら、爪先立ちで彼の頬にキスをした。「あなたは悪党よ、でもその高い技術で、この不思議な通信を解読してもらいたいの。」
「興味深いな!」フェリックスは本当に嬉しそうに言い、高価そうな泡立つ金色の飲み物を2つのグラスに注いだ。差し出されたグラスをヴァレンティーナは慎重に受け取った。心配していたのは毒ではなく、富裕層が好んで強化作用と言い張る金の注入物だったが、その心配は無用だった。フェリックスの好みは風変りで、蒸留酒の好みもその例外ではなかった。「研究室に行って、解読できるかためしてみよう。録音したものがあるんだろう?」
「手ぶらで来ると思う?」
「そりゃそうだな。さっそく聞いてみよう。」
廊下には他にも人がいたが、それはフェリックスの問題。詮索好きな客が勝手に情報を広めても、ディスカウントなんてしないわよ。とヴァレンティーナは思った。
「奇妙なの。」と警告すると、通信機を取り出して何気なく再生し、「これを録音した時にいた場所と、同じくらい奇妙だわ。」
フィリックスは「ふむふむ…」とつぶやくと、黙って耳を澄ませた。
「…遺物はどこかにあるはずだ。もし見つけることができれば……」通信はパチパチと音を立て、で聞き取れなくなった。ミアズマに近い場所では厚い静電気に覆われて通信が難しかった。「武器は…鼻から払う…ガブリエル王子」
通信が終わると、フィリックスは目を見開いて「これはこれは。」と言った。ヴァレンティーナは、自分には買えないような豪華な衣装を身にまとったフェリックスの招待客の群れを眺めていた。「王子様…。とても興味深いな。ところでなぜ僕のところに来たのかい?」
「誰もが手に入れたがってる、最高の王族の技術を持ってるでしょ。」それは真実だった。 「それに、価値のある情報にはそれなりの対価を払う人間だわ。」とヴァレンティーナは言った。
「少し雑音を取り除いてみるか。」フェリックスはそう言うと、研究室のドアを開けた。通信機を自分の機器に接続して作業に取りかかった。「 前回のちょっとしたいざこざの借りはあるが、何よりも僕はビジネスマンだ。」
「もし価値があるものなら、分け前は半々で良いわ。」と仕方なしに言った。タダでやってもらうこともできただろうが、この方が早い。貴族集団の自分を見る目が気に入らなかった。「それで?」
フェリックスは断片を聞いて、堂々と「君の持っているものに興味がある。」と言って、完成したものと一緒に通信機を手渡した。プラスティ・グラス越しに見ている3人の貴族に目をやり、研究室のドアに近づいていった。バレンティーナはブラスターには手をかけず、静かにグラスを置いた。「どうやら僕だけではないようだ。アステリアス号に急いで戻ってくれ。できる限り時間を稼ぐから。」と言われると同時にバレンティーナは召使の入り口から階段を降りて、後を追われないことを祈りながらその場を去った。
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出典:Gala Games Medium: Echoes of Empire
原文:The Pale — Part 8 — Valentina and the Echoes of Empire