エコーズ・オブ・エンパイア物語: 第4話「シェパード・ヴォイド

軍事地域にはいつも危険が伴っていた。

そこは独立保護領よりももっと複雑だった。民間人は入れず、自己を過大評価し過ぎる性質の人間が集まったその場所は、ライトスピアよりも息苦しかった。

それに、彼らは犯罪者が嫌いで、もしヴァレンティーナがここで捕まったら酷い目に合うことは目に見えていた。若い頃一度や二度、軍に反発したことがあるが、この業界のほとんどの人間が同じような経験をしている。ギャリソンがモナーキーから分離した今、少数派たちに目を向ける時間や資金がない彼らの目をかいくぐることは簡単だった。

少数派の一人であるヴァレンティーナにとって、それは好都合だった。

シェパード・ヴォイドは、帝国内でも他に類を見ない造船所の星だった。宇宙空間には巨大な未完成の船が吊るされ、その周りを何千人もの労働者たちの明かりが飛び交い、強大なギャリソンを築き上げていた。ヴァレンティーナの得意とする仕事が少ないこの地には、ライトスピアや独立保護領ほど頻繁に訪れることはなかった。

軍には、必要ならば自分たちで密輸品を手に入れる力があった。

契約先が計画を立てたスカイボックスに配達することになっていた。交通の流れから外れていることは有難いことだったが、それ以上に、配達に含まれていると言ってクララが渡してきた、このコードに感謝していた。コードがなければ、誰もギャリソン地域に入ることはできない。

今回配達する木箱には、たくさんの部品が入っていた。そこそこ腕のいいエンジニアでもある彼女は、なんらかの高価な武器の部品であろう、と気づいていたが、それは彼女には関係のないことで、探るほどの関心もなかった。スカイボックスに行くためにはさらに3つのコードが必要だったが、最初にシェパード・ヴォイドの端に存在する警戒隊を通過したコードと共に入手済みだった。ライトスピアや独立保護領と同じように、美しい建築物やデザインで溢れているスカイボックスは永遠に存在するように建てられ、硬質でエレガントな一本の大きな柱のように無重力に浮いている。

仕事に無関心で死んだような目をしている秘書に「ポッシュ大尉に配達です。」と伝えた。ヴァレンティーナはこういうタイプが大好きだった。銀河系内のすべての物を嫌い、誰かが法をすり抜けて稼いでいてもまったく気にしない。しかしそれは同時に、すべてを嫌うがゆえにすべてを必要以上に面倒にしようとする者かもしれない可能性があり、常にギャンブルだった。「直接受け取る。と聞かされています。」

秘書は机のボタンを押し「大尉、配達が来ています。」

返事はなかったが、しばらくすると秘書の後ろにある金色の幾何学模様が施されたドアが開いた。

「自分で受け取る。」とポッシュ大尉が言った。年配の紳士に見えるが、もし彼が密輸業者を雇っているのであれば見た目ほど堅実ではない可能性が高い。「一緒に来なさい。」

ヴァレンティーナは仕方なしに、パワースレッドに乗った荷物と一緒に大尉の後について船に戻った。

「どこにでも持っていきますよ。」と言ったが、大尉は明らかにそれを無視するので、少し痺れを切らしながら、「ここに長居されたらこまるでしょ ?」と言った。

ポッシュ大尉は「何のことか全く理解できんが ?」「ここに降ろしてくれ。荷物は自分で降ろせるんだろ ?」と彼女の顔も見ずに言った。

「パレットに乗ってるわ。」と言いながら、すべての荷物を同じように扱っていて良かった。とヴァレンティーノは思った。積み上げられた木箱を地面に降ろした後、ボタンを押してパレットから丁寧に引き出し、「他に何か必要なものはある ?」と尋ねた。

「いや、これで結構。」そう言いながらポッシュ大尉は書類に目を通して頷き、「船に戻ってすぐにここを出なさい。シェパード・ヴォイドを抜けるまでは監視されている。くれぐれも他の仕事を探すようなことはしないように。」

この時ばかりは嘘をつかずに「まさか、夢にも思わないわ。」と言った。傍を歩く大尉には横目もくれず、アステリアス号に真っ直ぐ早足で戻った。船に戻りホッとするやいなや、大尉に軽く手を振り素早く離陸した。

何かがおかしい。仕事が上手く行かなかった時の直感だった。大尉がアステリアス号を見送る姿や、いわゆる「護衛船」が後ろについてくるのを妙に感じた。

一発目がアステリアス号の表示域をかすめた時、ヴァレンティーナはあらゆる言葉で罵倒しながら、追手が増える中自分の直感が正しかったことを確信した。ギャリソンが密輸業者を野放しにすると思った自分が馬鹿だった。

ギャリソンの攻撃船がアステリアス号に迫る中、数秒内に船のコースを決めなければならない。ヴァレンティーナは操作盤を叩きながら考えた。

安全だが常に警備されている航路、ロデスター・ヘブンを選ぶのか、それとセレスティアス・ノックスで見つけた銀河瘴気のさびれた片隅に逃げるのか ?

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