エコーズ・オブ・エンパイア物語: 第6話「クルーシブル」

第6話「クルーシブル」

クルーシブルへの飛行中、何日も寝ていないことに気が付いた。古代人が時の絞首台と呼んでいるこの場所を訪れるとき、いつも不思議な夢を見る。ヴァレンティーナにはその意味がよくわからなかったが、時が止まる場所だった。FTL エンジンが先週からずっとフル回転だったアステリアス号には、念入りなメインテナンスが必要だった。運良く長年その座標を持ってはいたが、名前も覚えていない辺境の星系にあるマテオの家に予備の停船場があることを願った。

マテオの家はぼろぼろだった。少なくとも、近づいてくる船にはそう見えるはずだ。密輸業界によって管理された、万が一の時に仲間が身を隠せる穴場の一つだ。見た目よりも大きく、重い武装をしている。

ヴァレンティーナはマテオをよく知っていた。初めて密輸に手を染め、アステリアス号を手に入れた直後に出会った。彼はとても優れた偽造者で、2、3人のまともなメカニックを抱え、いつも信頼できるパスコードを提供してくれた。顔が広く、色々なことを知っている友人が沢山いる。運がよければ、今回一体どこで何を間違えたのか分かるかも知れない。

まともな密輸業者にとってマテオは信頼できる友人に近い存在であり、ヴァレンティーナは彼を信頼している、と言ってもいい位だった。「信頼は最も汚い言葉だ。」と彼女の師匠はよく言っていた。裏切られることは無いと確信していたが、それでもアステリアス号を着陸する際には周囲にかなりの注意を払った。

数ある停船場の1つにアステリアス号を停めた。ここに訪問客が来ることは少なく、マテオは人嫌いで自分用の停船場を使わせることもない。ヴァレンティーナは裏の大きな客用の停船場ではなく、勝手に表の停船場に停めた。

「私があげたブランデーをまだ持ってる ?」ヴァレンティーナは、彼がとっくに飲んでしまったことを承知の上で、家の中をうろうろしながら冗談交じりに声をかけた。荒々しい外見の内に、マテオは整然とした空間を保っていた。可愛こぶっているわけではなく、警備ボットに爆破されるのを避けるために自分の身元を明らかにした。マテオの警備は厳重だ。「追跡にあって、今日はもう戦う気になれない。」

「ヴァレンティーナ・バルバロが戦いから逃げる ? なんとも ! 既に時代の終わりが近づいているのか ?」

マテオの荒いガラガラ声が居住空間から聞こえてきた。ヴァレンティーナはビーズのカーテンを押しのけて、広いキッチンに足を踏み入れた。背が低くがっしりした老人は、ワイルドな髭を生やし手に神経痙攣を持っていた。

「思ったよりも手が焼けたの。」彼のひげ面の頬にキスをしようと、微笑みながら身をかがめて近づくと、マテオが妙に緊張しているのに気付いた。「どうしたの ?」

「あれもこれもさ。 」と、マテオは手を振って言うと「冷蔵庫に何があるか見てみよう、果物が好きだったろう。」と続けた。

自分の声が好き過ぎて常におしゃべりなマテオが、珍しく質問を避けた。彼が席を立ったテーブルの上に、データパッドと1つのデータチップが置かれてるのをヴァレンティーナは見逃さなかった。

良くないと思いつつ、好奇心に負けて理由もなしにチップを手に取った。前回、マテオの愚かな行動によって多額の出費をしたことへの仕返しだ。と理由をつけた。あんなミスは許されない。彼女は自分のデータパッドにチップを差し込み、素早く中身をダウンロードすると元の場所に戻した。

パッドには何かの座標が表示されている。ヴァレンティーナはアステリアス号に戻ったらしっかりと確認しようと、心に誓った。

キッチンから戻ってきたマテオは、プレートに盛ったカットフルーツを片手に「じゃあ、どんな争いは避けたいのか教えてくれ。」と言った。 「ヴァレンティーナ・バルバロにとって何が面倒なのか、興味がある。」

ヴァレンティーナはフルーツを食べながら、少し苦い顔をして、「普通の仕事だと思っていたの。」と言った。「最後にシェパード・ヴォイドを通ったの。 密輸業者がどういう扱いをされるか知っているでしょ ? 何か知ってるんじゃないかと思って。」フルーツも苦かった。

「サブスペースでの雑談は沢山あるが、君にまつわる話は一つも耳にしていない。ギャリソンは密輸業者を嫌っているが、それ以上でもそれ以下でもない。」

「そう。前払いで良かったわ。しばらくはハウス・スペースには近づかないようにするわ。」

ヴァレンティーナがエンバーズ・グレイスの星団を去ったことで、NFT のプレセールも終了します。次の目的地は、冒険の続きによって明らかになるかもしれません。

ヴァレンティーナの冒険、そしてエコーズ・オブ・エンパイアの次のクラスター (星団) のセレスティアル・クレイム、プレセールにご期待ください!

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