エコーズ・オブ・エンパイア物語: 第2話「独立保護領」

「王族なんて大嫌い」ヴァレンティーナは不機嫌そうにぼやくと、貴族の誰かに雇われているであろう、一流の偽造者から大金を払って買ったパスコードを転送した。承認された荷物の後にコードを滑り込ませるのは容易で、ほぼ完璧な偽造コードに大金を払った価値はあった。この手の仕事が苦手だったら、密輸業を引退していたかもしれない。「アルファ・ステーション、着陸許可をくれる?」

長い待ち時間は想定内だった。ほぼ完璧な偽造コードに大金を払うのを嫌がる密輸人もたくさんいるが、ヴァレンティーナはその価値があると考えていた、あちこちで行われる検査で、怪しいコードは見つかる可能性が高い。彼女の船、アストリアス号に違法品は何も積まれていなかったが、常に危険が伴う公的検査は受けないに越したことはない。

遂にフライトコントロールが「着陸を許可する。」と言った。ヴァレンティーナは深く息を吐き、船を待機列に並べた。「渋滞に注意。」

「皇帝の警備隊、フライトコントロール」と礼儀正しく言った。この手の人種は、礼儀作法に厳しく、礼儀には裏金を払うのと同じくらいの価値があった。忙しい彼らが応答するとは思わなかったが、とりあえず「グッドラック」と伝えた。

銀河系でも他に類を見ないほどの豪華さを誇る独立保護領は、巨大で輝く宮殿を中心にすべてが回っていた。ここには本物のお金が存在する。

この地域のどこからでも見える磨きつくされた宮殿、壮大にそびえ立つその塔には、何十億もの小さな光が灯され、まるで星のように輝いていた。周りを飛ぶ宇宙船は、その光の反射でキラキラと輝き、宮殿全体が色とりどりの火花の滝に囲まれているように見えた。詩人、作詞家、俳優、哲学者たちは、この宮殿をまるで神話のようだ、と記している。

ヴァレンティーナは、いつものようにこの独立保護領に感心していた。現実と不釣り合いなこの眺めではなく、この銀河で一番セキュリティーが厳しく仕事がやりずらいところに対してだ。

キラキラと光り輝く場所の裏には闇がある。そんな場所は彼女にとって最高の仕事ができる場所だった。

保護領には、合法的かそれに近い選ばれた者だけが住んでいた。

王室はすべての住人を保護領に住まわせたが、王室召使いの為の住居も必要だった。ヴァレンティーナはアステリアス号を、なんの変哲もない大きなの浮遊別荘に着地させた。着地台には十数隻の船を収容できるスペースがあったが、埋まっていたのは自分を含めて4つだけだった。完璧だ。なにをするためにこの地にきたのか、誰も知らなければ人生はずっと楽なはずだ。

別荘に入り、見慣れたオフィスに向かいながら「クララ、元気 ?」と言った。友達ではないが一緒に長い間仕事をしていたことがあり、彼女が関わっていることが、この仕事を確かなものにした。そうでなければニーシャの仕事は引き受けなかったかもしれない。「色々準備してくれたみたいね。」

「ヴァレンティーナ・バルバロ」とクララは言った。彼女は長身で、やせ型、きちんとした服装だが、いつも目立たないように質素にしていた。身につけている宝石が本物なのか、少し離れたドアからでは見分けがつかなかった。「ニーシャと連絡が取れたみたいね。」

「ケプラーズ・レムナントにまで帰ったわ。」と言い、ヴァレンティーナは快適な白い革張りのソファに座った。「かなりの大金が動く、ただ、その分ヒートアップするかもしれない、と言われたわ。」

「彼は間違っていないわ。その行儀のわるい足をテーブルからおろして、ついて来て。」クララがそう言って立ち上がると、ヴァレンティーナはその後に続いた。廊下は美術品で埋め尽くされ、片側にはヴァレンティーナの身長の2倍ほどの高さの抽象画が、もう片側は巨大で透明なデュラガラスの壁だった。クララの別荘は他の別荘ほど豪華ではなかったが、眺めは最高でその持ち味を最大限に活かしていた。「バルバロ、あなたに期待してるわ。さっそく仕事の話をしましょう。ここにあるたくさんの木箱に皆んなが欲しがっているものが入ってる。そのいくつかはライトスパイアのアーベイターズ派閥に、残りはシェパード・ヴォイドのギャリソンに運んでもらいたいの。」

ヴァレンティーナは、自分にトラブルが降りかかるのを避けるために、「通常の輸送ルートだと何か問題があるの ?」と尋ねた。「最後に聞いた話では、交通渋滞がまだ酷いっていう話だったわ。」

「交通渋滞は調べたわ。」クララは返した。手を振りながら素晴らしい眺めのホールを出て、壮大なバルコニーに出ると、そこには青々とした緑が広がり、満開の花と、みのりかけのフルーツで埋め尽くされていた。ケプラーズ・レムナントでは、実用的な食用植物だけが水耕栽培されていたが、この独立保護領では、まるで階級の象徴かのようにきちんと土壌栽培されている。その費用はヴァレンティーナには想像もつかなかった。「検査をすり抜けて”木箱 “を届けて欲しいの。あなたにはそれが出来るわ。」

「そうね。」ヴァレンティーナはニヤリと笑って頷いた。「木箱を見せてちょうだい。どこでも必要な場所に運ぶわ。」

エコーズ・オブ・エンパイアは、伝統的な4X 戦略ゲームです。プレイヤーは、守られた宇宙の地、ケプラーズ・レムナントから旅を始めます。陰謀と危険に満ちた銀河を旅するヴァレンティーナと共に旅をしよう。

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