エコーズ・オブ・エンパイア物語: 第1話「ケプラーズ・レムナント」

ケプラーズ・レムナント

「ここには決して戻らないと言ったけれど、貴方には借りがあるから戻ってきたの。話があるなら早くして。」

バレンティーナ・バルバロは不機嫌そうに言った。

普段自分では買わないような高いボトルを横に、テーブルの向こうのは頼みごとを持ちかける旧友が座っている。人生最悪の日。とまでは言わないが、今日はその次くらいに最悪だった。

ケプラーズ・レムナントに戻ってきたことをとても不思議に感じる。ヴァレンティーナはここで育ち、基地から基地へと移動し、小さな家で小さな仕事をしながら権力者を避ける辛い人生を送った。若い頃は本当に大変だったが、どこよりもよく知っているこの土地に戻ってくると、不思議な安心感があった。タダ酒と簡単な仕事にありつくには結局ここに戻ってくるしかなかった。

ムーンの酒場は薄暗く、壁には長年取り扱っていないビールのネオン看板が点滅している。地元民が毎晩のように起こす乱闘で店は汚れ、ブラスターの跡までついている。バレンティーナは3つの喧嘩を避けながら店に入り、4つめの喧嘩をぼんやりと眺めていた。

「この辺の雑魚では手に負えない、良い仕事の情報が手に入った。」と、ニーシャが言った。ニーシャは偽名で本名はどこかの皇帝か誰かにちなんで付けられた名だ。ヴァレンティーナが彼と出会ったのは、二人がまだこの宇宙を必死に生き延びようとしていた悪ガキ時代。ニーシャには借りがある。戻ってこいと送られてきた通信も差出人が彼でなければ、断っていた。「大金だぞ。ヴァル」

「私が大金に動かされるような奴じゃないって知ってるでしょ?」ヴァレンティーナは疑心の目で返した。彼女がぼんやり眺めていた喧嘩は、注文を待つ客の列に飛び火し、3人増えた大喧嘩になっていた。バーテンダーも呆れている。今の所まだ誰も武器を持ちだしていない。ムーン・ママは良い酒を注ぎながら、カウンターの下にずっしりしたナイトスティックと装填済みのブラスターを常備していた。喧嘩は気にせず、いつも壊したものだけ弁償しろと言う。彼女はヴァレンティーナのことも気にかけていた。ヴァルがグラスを掲げると、ムーン・ママは (ずっと前に割った顎のせいで) 歪んだ顔でニヤリと笑い返した。「何か裏があるんでしょ?」

気まずいことがあるかのように、二ーシャはビクついている。ヴァレンティーナとって、それは必ずしも破断を意味するわけでは無かったが、何に足を突っ込むのかは事前に知っておきたかった。酒の匂いで溢れる薄暗い馴染みの店で、多少の我慢はするつもりだったが、お金のためだけに仕事を受けることはしない。お金はいつも取り返しのつかないトラブルを引き起こすからだ。

ニーシャはグラスを空にして、「人目につくことになる。」と言った。ヴァレンティーナは酒を注ぎ足し (どうせニーシャの奢りだ)、椅子に戻った。「たぶん、そこらじゅうから。噂によると、銀河規模で何かが起こっているらしい。瘴気が消散して、すべての古代のシステムが手の届くところに来ていることと関係があるらしい。今回の旅では、あちこちで物資を調達し、目的地に届け、捕まらずに脱出することだ」

「つまり、私にとってはいつもの仕事ってことね。」と、凄腕の密輸業者であるヴァレンティーナは鼻で笑った。派閥の対立が事態をより複雑にしたが、3人の有力者 (または有力派閥) が争う所には、いつも利益の隙間がある。一度にすべての場所を見ることはできないし、撃ってくる敵の相手で精一杯だからだ。「なんで私 ?」

「信頼してるからさ。」

「無理よ。」

「まぁ、無理だな。」ニーシャは軽く認めると、タブレットを差し出した。ヴァレンティーナは電源を入れずに受け取った。「”信じる”タイプだってことはわかってる。それで十分さ。」

期待してた答えではなかったが、仕方がない。バレンティーナは仕事に困ってはいなかったが、舞い込んできた儲かる話を断る気はなかった。難しい依頼を受けたことが知れ渡れば、ビジネスにも良い影響がある。彼女のプライドでもある。悪い意味で人目を引くかもしれないからといって、しりごみする気はなかった。

「いいわ。引き受ける。」ヴァレンティーナはため息をついて空のグラスを差し出した。ニーシャが酒を注ぎ、二人は乾杯した後スペーサー (宇宙人) の握手をした。「まずどこに行けばいいの ?」

エコーズ・オブ・エンパイアは、伝統的な4X 戦略ゲームです。プレイヤーは、守られた宇宙の地、ケプラーズ・レムナントから旅を始めます。陰謀と危険に満ちた銀河を旅するヴァレンティーナと共に旅をしよう。

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